国連生物多様性の10年市民ネットワーク JCN-UNDB

  • 国連生物多様性の10年市民ネットワーク 公式Twitter
  • 国連生物多様性の10年市民ネットワーク 公式Facebook
  • 国連生物多様性の10年市民ネットワーク 公式Youtubeチャンネル
  • 入会のご案内
  • お問い合わせ
  • JAPANESE
  • ENGLISH
  • 生物多様性・特派員メモ!

    【特派員メモ】 魚のゆりかご水田2017と鮒ずしの仕込み

    more

  • 生物多様性・特派員メモ!

    【特派員メモ】 『グリーンタイガーが目覚める!』上映会(虔十の会)

    more

  • 生物多様性・特派員メモ!

    【特派員メモ!】夷隅川(いすみがわ)によってつながる、里山と里海をめぐる現地見学と公開セッション(2)

    more

  • 生物多様性・特派員メモ!

    【特派員メモ】「夷隅川(いすみがわ)によってつながる、里山と里海をめぐる現地見学と公開セッション」(1)

    more

  • 生物多様性・特派員メモ!

    沖縄県東村高江〜やんばるの森とヘリパッド建設〜 

    more

  1. Home
  2. 国際会議の動向 > 報告 > 生物多様性条約 COP11 参加報告

国際会議の動向

INTERNATIONAL CONFERENCE

生物多様性条約 COP11 参加報告

2013.09.29

開催地 : インド ハイデラバード
開催期間 : 2012年10月8日~10月19日

三石 朱美
所属:日本環境法律家連盟(JELF)

COP11の成果

COP11での全体的な印象は、2010年に名古屋で開催されたCOP10での決議案でもある生物多様性実現のために設定された20の愛知目標や、遺伝資源に対するアクセスと公平な利益分配(ABS)についての名古屋議定書のような大きな決め事が少なく、むしろ、COP10で合意が得られた項目をいかにして実現(implementation)するかといった議論が中心にあったように感じた。EU、日本をはじめとする先進国や国際機関ではCOP10で決まった愛知目標を達成するためのプロセスや方法などについて、サイドイベントなどで報告する等のアピールも行われていた。
 資金問題に関しては、途上国側からの愛知目標達成のための作業の多さのアピールに基づく追加的な資金融資の要求などによって、最終日の深夜まで議論がまとまらず、最終的にはEU主導での決着となった。国内支出が大半を占めるものと思われているのだが、インドが5千万ドルを出すことを表明し、途上国政府が大きなお金を生物多様性保全に支出する立場を示したことは非常に大きな成果であったと考えられている。

先住民族と地域コミュニティ(ILCs)とのネットワーク構築

 COP11に参加した際の私自身の獲得目標は、今年5月に参加したカナダ・モントリオールでのSBSTTA16に引き続き、ILCsといわれる先住民族と地域コミュニティの代表の人たちとのネットワークを構築することであった。COP11では1100人超のNGOからの参加者の他、ILCsからも約150人の参加者があった。両者はそれぞれに発言権などがあり、毎朝、本会議が開催される直前のミーティングも別々に行っている。私自身はNGOという身分での登録であるが、ILCs戦略会議への参加を許可していただき、会期中の基本的な行動は彼らと共にとった。
ILCsは生物多様性条約を単なる技術的な環境条約として精緻化させるだけでは生物多様性を守ることができないという観点から、人権と社会的公正に関する条約としての側面をより重視した立場をとっている。生物多様性条約の運用においても、国連憲章、国際人権規約、先住民族の諸権利宣言との整合性を明確にすることを求めているため、COP11では、先住民族の権利を確認した国連憲章などの用語に基づき、これまで生物多様性条約の会議や議決案で用いられていたILCs(Indegenous and Local Communities)という用語を次回以降、IPLC(Indigenous Peoples and Local Communities)という表記に変更することを求める提案を行っており、この点については締約国からの承認が得られた。
ILCsの場合には、COPが開催されないと各地域からの代表が正確にわからないこともあり、本会議での発言についてはILCsは論点ごとに個別のチームを作り、一日の議題スケジュールに応じてチームごとで発言案を作成し、毎朝の戦略会議で獲得目標など全体に共有し、文案に修正していくという形で議論が進められていた。そのため、COPに参加するのが初めての人々と何度も参加している“ベテラン”との間での丁寧な経験の摺合せなどが繰り返し行われ、一見非効率的なこともあるのだが、戦略会議が同時に参加者のキャパシティビルディングとなっている様子も感じられた。

 またILCsの伝統的な知見についての公平な利用と利益分配についてを決めた名古屋議定書については、名古屋での議論の際には彼ら抜きの密室で夜中に決められたといった評価がされていた。彼らが今後の参加手続きを確保していくためには、保全または持続可能な利用の要請と両立する伝統的な文化的慣行に沿った生物資源の利用慣行を保護し及び奨励することを定める10条c項に基づいた働きかけにも重点がかかっていた。また、本会議と並行して行われたEU代表団とILCsとの懇談会の場においては、COP10でのような密室の決め方は二度とあってはならないという要求も厳しくなされていた。
 またILCs戦略会議の中では、自然保護区の制定を進める動きに対し、カメルーンで制定された自然保護区の中に自分の部族の地域があった女性から、自分自身の体験として、国立公園になった後一度も故郷に立ち入ることを許されず、その場所がどうなっているのかといった情報の開示もなされていないことなどが語られた。人類はどのように自然を扱えば、人間と自然とを分裂したものとしてではなく人間も自然の一部としてmother earthを共有できるのか?という切実な問いが共有された。

COP10で決議された愛知ターゲットで示される20の個別目標は、各締約国がおのおの生物多様性国家戦略を策定する際に、国ごとにその達成の道筋を示すこととされている。そこでILCsの課題とされたのが、生物多様性国家戦略にどう地域の資源・声を反映させるか、環境保全を訴える際、地域社会の中にある資源・文化的なものをどう指標化していくのかといった点である。特に、自国の政府からの開発圧力や人権侵害にさらされることが多いILCsの人々としては、自国の生物多様性国家戦略制定に関し、COPという国際会議の場を利用して、地域社会の資源を国や自治体に尊重させるために、何を求めていくのか、という点の議論がなされていた。
ILCs戦略会議ではフィリピン・コルディレラ地方での取組をケーススタディとして、地球温暖化防止枠組条約の中から得られた資金をもとに実現されている地域資源の5つのカテゴリーについて調査し、統計地図を作成する取組の成果を生物多様性条約の議論の中でフィードバックさせていくという方法を学んだ。

原発問題、沖縄基地問題

 COP11は、東日本大震災での原発事故後、初めてのCOPでもあった。今回、UNDB市民ネットからは福島県喜多方市で有機農業に取り組む浅見彰宏さんと長谷川浩さん(福島県有機農業ネットワーク)も参加された。浅見さんと長谷川さんは、原発事故以前から取り組む農業と地域コミュニティを再構築してきた活動を紹介された後、原発事故によって生じた葛藤、事故後の放射能市民測定センターによる汚染データの蓄積などの市民科学者としての取り組みなど紹介された。イベントに参加していたインドのユース代表の青年からは「彼らが地域を取り戻すための活動に感銘を受けた」というコメントも寄せられた。
その一方で、インド南部の沿岸部でクダンクラム原発の新設に反対している人々はCOP11の会場の中に入る許可をインド政府から得ることができず、日本から参加していた高尾山の坂田昌子さん(虔十の会)がハイデラバード市内の市民集会で対話する機会を持たれた。日本側でも坂田さんの経験を共有し、ともに地域を守るために立ち上がる人々との関係を築けたらと考えている。
 2010年のCOP10の際、沖縄の市民からの働きかけを受けてILCsは閉会時の声明において辺野古・大浦湾の豊かな生態系が基地建設によって破壊されることに対する憂慮を示していた。通常、本会議では個別具体的な問題に触れることがない国際会議においてこれは特筆すべきことであった。そこでILCsの戦略会議に働きかけ、沖縄から参加されていた瀬長修(沖縄生物多様性市民ネットワーク:沖縄BD)さんとともに、武者小路公秀先生の助けを借りながら、沖縄が置かれている状況について米国ジュゴン裁判ややんばる高江SLAPP訴訟などを例に挙げながら紹介し、COP10以降、事態はより深刻になっていることを伝える10分程度のプレゼンを行った。
 基地問題に限ったわけではないが、たとえば、現在、内戦が拡大しているコンゴ東部でゴリラの保護に取り組む男性のように各々の地域が深刻な人権侵害や環境破壊に直面しているILCsの人々の間では、私たちのプレゼンに対する理解はとても深く、共感と支援の声が多く寄せられた。また、特に、同じく米軍基地の建設が進められているコロンビアの女性とはJELFや沖縄BDが持っているアメリカのNGOとのネットワークなどを共有していく約束をした。政府の取り組みに反対している人々の声として、韓国からの参加者はいなかったのだが、COP11開催直前の韓国でのIUCN世界大会の際の済州島での米海軍基地建設に反対する人々のことも話題となった。

IIFBの運営について

 ILCsに参加している先住民族のグループの活動は、IIFB(International Indigenous Forum on Biological Diversity:生物多様性に関する先住民族の国際フォーラム)というゆるやかなネットワーク組織によって維持されている。全世界の参加者からなるIIFBは、アジア、アフリカ、北米、中南米、ロシア、太平洋地域、北極圏として7つの地域ネットワークに分かれており、全体の方針など参加者のコンセンサスが必要な議題などは、各地域からの代表コーディネーターと、また、COPやSBSTTAや8jなど国際ワークショップへの参加を維持するための資金獲得などを担当する国際コーディネーター(現在はケニア・マサイ族のルイさんとハワイ先住民族のマリアさんの2名の女性)との話し合いで決まっている。
例えば、IIFBとしての組織運営などが朝の戦略会議で議題になった場合には、まず、各地域ネットワークの中でそれぞれが意見を出し合い、地域コーディネーターがグループとしての合意をまとめ、そこでの意見を各地域代表のコーディネーター会議に持ち寄り、そこで大きなコンセンサスが作られた後、再度、全体会議に諮られ、参加者の意見を確認してIIFBとしての合意が作られるといった形で運営されている。

今回、IIFBのコーディネートに関して議題になったのは通訳の件であった。
参加者の歴史的な背景から、IIBFの参加者のうち、中南米からの参加者の多くは母語の他、本会議での議題などに関する議論はスペイン語を利用して行っている。また、アフリカ系参加者の半数以上がフランス語を、また、ロシア語圏の参加者、そして、アジア系、太平洋諸国の参加者は英語を使っている。
したがって、通訳の存在が不可欠である。
 2010年、名古屋で行われたCOP10においては、ILCsの戦略会議については、日英通訳の他、英西、英仏、英露それぞれの言語での同時通訳が手配されており、世界各国から参加する多様な人々が、議論に参加することができた。
 しかし今回のCOP11では、ILCsの参加に関する大幅な予算カットが響き、英語・スペイン語の同時通訳のみしか手配できなかったのである。それ故、特に当初、フランス語圏のアフリカ系参加者からフランス語通訳の不在が問題視され、国際コーディネート担当のマリアさんが疲れ果ててしまう事態が発生した。
 また、アジアでCOPが開催される際には、通訳機材の確保、参加者の宿泊先や移動手段の確保など、具体的なロジ支援については、アジアのネットワークが受け入れコーディネートを担当することになっている。しかし、ボンでのCOP9以降、名古屋、ハイデラバード、次回予定が韓国と3回連続でアジア地域でのCOP開催が予定されているとなるとアジア地域のコーディネート負担が大きすぎるのではないのか、といった意見も生じることとなった。
 そこで、改めて、ILCs会議に参加している各々がコーディネートを担当している“ベテラン参加者”におんぶにだっこ状態をよしとするのではなく、IIFBの活動に対して、自ら主体的に何ができるのかを地域ごとに分かれて議論することになった。これはCOP期間中の組織体制に関することだけを指した議論ではなく、次回、次々回と将来に続くCOPをも見据えて、それぞれが自分の地域に帰った時、IIFBという世界的なネットワークとの関係を意識しながら自分の地域でどんな活動ができるのかといった問いかけでもあった。
 インドで開催されたため、特に、南アジア地域からはCOPへの参加自体が初めての人も多いアジアグループでは、会議の中で使われる専門用語・会議運営用語(たとえば、contact groupとかFriends of Chairなど)の意味や位置づけがわからないから、何度も参加している人から講義してほしいという意見がでたりもしていた。
 この問題については、たまたま、私自身が、国連環境計画(UNEP)が発行している多国籍環境条約に参加する人のためのハンドブック(英語版)をインターネット上で入手していたこともあり、ウェブサイトのURLをIIFB参加者全体のメーリングリストに投稿して参加者全体に共有する事、また、他の言語の参加者の中で英語がわかる人が地域ごとのグループ内で共有してほしいという提案をすることで、落ち着いた。
 また、特に通訳の不在が問題視されたフランス語圏参加者の間では、英語・フランス語の両方を理解できる参加者が戦略会議中、ボランティアで同時通訳を行い続け、通訳機材はないのだが、会議中は彼のささやき声が聞こえる場所にまとまって座ることでなんとか会議を乗り切ることになった。
 こうした経験から、次回のCOPに向けて、改めて専門用語を用いて意思疎通ができる“語学”の重要性がすべての参加者に共有され、また一方で、その専門用語をそれぞれの部族の言葉・社会に持ち帰って説明できる必要性などにも認識が深まったのであった。
 また、バングラデシュなどからまとまった人数で初めての参加者が現れた日などは、戦略会議後に、意識して議題のキーポイントなどを説明する簡単な学習会などが開かれるようになった。
韓国でのCOP12に関しては、連続になってしまうが、アジアグループでコーディネートのサポートなどしていこうという結論が出たが、その一方で、韓国に先住民族グループがあるのか(韓国に先住民族がいるのか?)といった懸念も表明された。そこでそれぞれ韓国のNGOとの交流の経験がある人々は、COP12に向けて韓国関係者とコンタクトをとった成果などを共有しあい、韓国内の人々との関係構築を目指し、それぞれが韓国内の事情を知っていくための行動をしていく必要があるという方針で一致した。
 その一方で、国際コーディネーターの二人の負担を減らすためにも、ロジに必要な情報などをリスト化して整備・蓄積していくことで、問い合わせのためのメールの往復を減らすこともできるのではないかなどといった実務的な協力体制も作っていくことで一致した。私も名古屋COP10の際に、レセプションの準備・手配や会議の時の食事の手配などで協力し、具体的な情報がなくて困ったことなどもあったので、今回の受け入れ実務を担当した女性と二人でリストの原案を作り、韓国での準備が動き出した際に、一緒にち密化していくことを提案するなどした。

 2014年のCOP12は、韓国で開催される。秋以降、尖閣・竹島問題など東アジアの外交問題が海外でも報じられていたこともあり、特にアジア圏のILCsメンバーの間では改めて、自分たちは国家を代表して参加しているわけではなく、市民社会を代表して参加していること、現在、国家間の対立が深刻さを増しているように見えるからこそ、次回のCOP12までにお互いのコミュニケーションを密にとりながら、世界各地からともに協力し合って建設的な社会を作っていくのだという理念を共有した。

ダリットの村訪問

 会期期間中の休日、日曜日に、IMADRから参加された武者小路先生、沖縄BDから参加された瀬長修さん、被差別部落出身の川元さんがインドのカースト制度において下層とみなされ差別されるダリットといわれる人々とのサイドイベントを行われたことがきっかけで、ダリットの皆さんが住むハイデラバード郊外の村も訪問した。組合の方と地域リーダーの皆さんに案内頂き、地域リーダーの事務所、村の集会所、カースト殺人が行われた現場など数カ所訪問した。
案内下さったのはDalit Bahujam Shramik Union, Hyderabad のLeslieさん。Dalit Unionでは労働問題、農地をめぐる問題、債務奴隷の問題、教育や住環境をめぐる問題、カースト殺人などのヘイトクライムと戦う問題など、カースト差別に関わるあらゆることを扱っている。車中でいろいろ質問に答えて頂きながら移動し、村を訪問した。
 ハイデラバードは急速に都市化・近代化が進行している都市であり、被差別カーストは都市の周縁部に住んでいることが多いので、開発地区と指定されて移住を余儀なくされることも多いらしい。これは都市化の進行に伴う問題として生じているが、一方、農業を続けるよりも現金収入が多いので建設作業員として働く低位カーストの人も多くなっているとの事だった。また、都市部の路上生活者、スラム地区での生活者のほとんどがダリットといわれる下層カーストをはじめとする被差別者であり、街のゴミ拾いなど、人が嫌がる低賃金の仕事をする人も多いとのことであった。したがって、ユニオンの活動では最低賃金の保障をめざす労働運動の側面も大きいという。
一方、農村部においては、大地主のもとで働いている小作人は、賃金が低く、そのため貯金などが出来ず、娘の結婚式や家族のお祝い事、法事などで、大きな出費が発生するときには農園主などにお金を借りることになる。この場合、通常、3ルピー借りるとその利子は1年間で10ルピー(返済義務が13ルピー!)という暴利での借金となり、小作人であると同時に地主の債務奴隷へとなり、祖父母の代の借金を返すためにその農園主の下で、農奴として働くといったことなどもよくあったのだそうだ。
インドでは1980年に農奴(シュードラ)の解放が行われ、その後、2007年に農地の個人所有が認められるようになった。ダリットの中には、土地の使用権を手に入れたものの、その後再び、地主や行政に所有権が移転されてしまうなどしたため、土地を取り戻すため裁判や、正当な算出根拠による損害賠償金を手に入れるための測量などが必要な人も多いため、ユニオンでは法律的なサポートをしながらダリットの人々を支援している。
2か所目に訪問した村では、ユニオンのメンバーが訪問したことを聞きつけ沢山の村人が集まり、口々に行政から届いた書面が読めないから意味を教えてほしいといった問い合わせをして騒然とした。ダリットの人々の多くが文字が読めない人々か、もしくは、文字は読めてもヒンズー語または地域の言葉のみである一方で、インドの行政文書のほとんどが英語で作成されている。そのため、ユニオンの活動においては公文書の意味を翻訳する事なども大きな位置を占めている。活動はボランティアで行われているため、プロボノ活動に従事する弁護士など法律の専門家や、公文書を地元の言葉に翻訳する人々が必要だとの事であった。
 また、2012年3月、カースト殺人という悲劇的な事件が生じた場所も案内いただいた。これは、ダリットの人々とダリットよりは少しカーストが高位にある地域の人々が混在している地域の出来事で、雨季に湖からの洪水を避けるため、政府が家と道路を区切る背の低い堤防を家の前に建てたことがきっかけで生じた。ダリットの集会場に来た村人が、雨期に洪水を避けるため、堤防の内側にあたらる異なるカーストの人の家の敷地の前を通過したところ、“汚れた”人が敷地の中を入ることを許さないという理由で、殺されてしまったというケースであった。
事件直後、警察は通常の殺人事件としてこのケースを扱ったらしいが、ユニオンなどの働きかけによって、これは差別に基づく犯罪(カースト殺人)であることが裁判所に認められ、より厳しい刑事罰を適用することになったとのことであった。
現在も、道路が湖からあふれた洪水によって川になってしまう雨季には、家の前を通っらないと幹線道路に出られないのだが、訪問時、堤防と家の間にはこの家の住民の手によって壁が建設されていた。
 インドでは差別意識に基づく殺人は通常よりも重い刑罰を適用されなくてはならないという法律はあるものの、事件を捜査する警察が差別が動機であることを否定し、もみ消すことも多いようで、ユニオンでは法律家などの協力を得ながら適切な法の適用やJusticeをもとめた活動も行っており、環境問題という切り口だけでなく、彼らがより公正な社会を築いていくための取り組み・姿勢に、とても大きな刺激を受け、多くを学んだ。

ローカルコミュニティ・ネットワークについて

 前述のとおり、先住民族のネットワークとの交流についてはCOP10、SBSTTA16と徐々にではあるが深まってきた一方で、ILCsの戦略会議においては、地域コミュニティの存在感の薄さも目に付いた。
 たとえば、ダリットの人々や日本の被差別部落出身の人々は、国内社会の中では主流化とならない一方で、先住民族として異なる文化や言葉を持っているわけでもなく、ローカル・マイノリティ・コミュニティと位置づけられるであろう。また、植民地時代以降の各国の歴史などから、先住民族でもありながら同時に自分はローカルコミュニティからの参加者でもあるという人々もいた。
 ILCsの毎朝行われる戦略会議の運営自体がIIFBという先住民族のネットワークを中心に行われていたこともあり、ローカルコミュニティからの参加者の間で自分たちがCOPプロセスの中で、より存在感を持つためにはどうしていけばいいかといった話し合いもなされた。
 しかし、IIFBを中心とする先住民族の人々が、この間、COPプロセスの中で積み上げてきた蓄積や戦略から学ぶことはとても多く、また、先住民族側にとってもローカル(マイノリティ)コミュニティの人々が直面する自国の開発圧力にさらされる危機は共有できるものでもあることから、ローカルコミュニティの人々はまずメーリングリストを立ち上げて、お互いのバックグラウンドや問題意識を共有し将来的に大きなネットワークに広がっていくような取り組みを具体的に始めていくことが確認され、一方で、先住民族側も彼らの蓄積を共有しつづけていくことで、先住民族とローカルコミュニティという二つの枠組みからなるILCsの存在が全体のCOPプロセスの中においてより力強いものとなっていくことを目指すといった方針が確認された。

おわりに

 今回はILCs参加者も世界中から集まっており、COP11での議題を追うだけでなく、多くの地域から集まった人々とのコミュニケーションをとることができた。
 語学の面でもより深く学んでいかなくてはならないという自分の課題はあるのだが、今後も継続的にILCsと日本の人々の間をつなぐ役割を果たせるべく、生物多様性条約のことや持続可能な世界を実現していくために、行動したいと考えている。

PICKUP CONTENTS

  1. Home
  2. 国際会議の動向 > 報告 > 生物多様性条約 COP11 参加報告

国連生物多様性の10年市民ネットワーク

〒450-0001 名古屋市中村区那古野1丁目44-17 嶋田ビル203
国連生物多様性の10年市民ネットワーク事務所
TEL: 090-9895-2055
e-mail: inq@jcnundb.org

  • 国連生物多様性の10年市民ネットワーク 公式Twitter
  • 国連生物多様性の10年市民ネットワーク 公式Facebook
  • 国連生物多様性の10年市民ネットワーク 公式Youtubeチャンネル
  • 入会のご案内
  • お問い合わせ

このホームページは地球環境基金の助成金により作成されています

© Japan Civil Network for the United Nations Decade on Biodiversity All Rights Reserved.

page top