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【論述】名古屋議定書とその国内実施に向けた課題と考察

2015.06.21

名古屋大学大学院環境学研究科博士後期課程 小林邦彦

はじめに
2010年10月に愛知県名古屋市で開催されたCBD COP10では、2020年までの生物多様性に関する世界目標である「生物多様性戦略計画2011-2020および愛知ターゲッ卜」や「バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書の責任と救済についての名古屋・クアラルンプール補足議定書」、「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書(名古屋議定書)」など、様々な成果が出た会議となった。名古屋議定書は遺伝資源の取得の機会の提供にあたっては、各国の主権的権利を再確認すると共に、取るべき措置を規定(議定書第6条3項)、また、自国の管轄内で利用される遺伝資源や遺伝資源に関連する伝統的知識が、他国の国内法令等に従って事前の情報に基づく同意により取得されており、及び相互に合意する条件が設定されていることとなるようにすること(議定書第15条、第16条)を各国に義務付けている。

2010年10月に採択された名古屋議定書は、2014年7月に発効に必要な要件である条約締約国50カ国の締結を満たし、その90日後である10月12自に発効した。そのため、翌日の13日~17日にかけて、第1回締約国会議(COP-MOP1)が韓国・平昌にて開催され、ABS情報交換センターの様態や議定書の遵守メカニズムなど13の決議が採択され、議定書の運用にあたって必要となる枠組みが構築された。しかし名古屋議定書はワシン卜ン条約(附属書1や2の指定種)や京都議定書のように国際的な共通の仕組みを作っているわけではなく、各国の国内法令に基づいて運用されることから、その整備が不可欠となる。名古屋議定書が課した義務、特に、国境を越えて取得された遺伝資源等の遵守を確保するための措置を整備している国は限定的であり、運用にあたっては道半ばの現状にあると言える。
そこで、本稿では名古屋議定書の仕組みを概観した上で、国内で実施していくにあたっての課題を抽出し、若干の考察を行う。なお、国内措置の検討にあたっては、環境省の下に設置された検討会が2014年3月まで開催され、報告書が取りまとめられているなど、政府内での検討も進められている。

1.名古屋議定書の交渉の経緯と概要
名古屋議定書は2002年に南アフリ力・ヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会議」で採択された実施計画のパラ44(o)「ボン・ガイドラインを念頭に、遺伝資源の利用から生じる利益の公正で衡平な配分を促進、保護するための国際的制度(International Regime)について、生物多様性条約の枠組み内で交渉すること」(下線及びカッコ内の加筆は筆者によるもの)を根拠に2004年に開催されたCBD COP7で交渉が開始された。採択された実施計画をみてわかるように、当時は国際的制度としており、必ずしも拘束力を有した議定書とはしていなかった。しかし、長年の交渉の結果、2010年3月に開催された第9回ABSに関する作業部会で初めて作業部会の共同議長から議定書という形式でテキス卜が提案され、議定書がCBD COP10で採択されたのである。採択された議定書の主要条文は以下の通りである。

<第3条 適用範囲>
議定書は遺伝資源および遺伝資源に関連した伝統的知識を対象としている。具体的には、生物多様性条約第15条3項に規定する遺伝資源(原産国が保有する遺伝資源又は原産国から合法的に獲得した遺伝資源)であり、名古屋議定書効力発生前に取得された遺伝資源や国家管轄権の及ばない範囲(例:公海、深海底、南極地域など)において取得された遺伝資源は適用対象とならない。

図1 名古屋議定書の下での遺伝資源へのアクセスと利益分配

図1 名古屋議定書の下での遺伝資源へのアクセスと利益分配

<第4条 国際協定及び国際文書との関係>
第4条は名古屋議定書とその他の関連する国際協定や国際文書との関係について、規律している。
第4条4項は、遺伝資源へのアクセス及び利益の配分に関する専門的な国際文書が適用される場合、名古屋議定書はその文書が対象とする特定の遺伝資源を対象としない。

<第6条 遺伝資源の取得の機会の提供>
第6条は、遺伝資源の取得の機会を提供するにあたって講じるべき詳細な手続きを規定している。
具体的には、3項に規定されているように、公正で恣意的でない規則及び手続を定めること、また、事前の情報に基づく同意を与えるとの決定及び相互に合意する条件の設定を証明するものとして、許可証を発給することなどである。しかし、1項で国家の主権的権利を再確認していることから、締約国は遺伝資源の取得の機会を提供するための手続きを設定しなくても良い。また、設定する場合でも、事前の情報に基づく同意を得ることを求めない異なる仕組みにすることもできる。ここではその標準的な仕組みとして、事前の情報に基づく同意を求める仕組みを提示しているのである。

<第15条取得の機会及び利益の配分に関する国内の法令又は規則の遵守>
本条は、名古屋議定書の中核となす条文となっており、遺伝資源を利用する国は、自国の管轄内で利用される遺伝資源が提供国の国内法令に従い、事前の情報に基づく同意 (Prior Informed Consent : 以下PIC)により取得されており、及び相互に合意する条件(Mutually Agreed Terms: 以下MATs)が設定されていることとなるよう、措置を取ることが求められている。なお、第16条は遺伝資源に関連する伝統的知識を対象に同様の義務を課されている。

<第17条(遺伝資源の利用の監視)>
第17条は、遺伝資源の利用者が提供国の国内法令を遵守しているかどうかを確認する一環として、1.遺伝資源の利用を監視(monitoring)するためのチェック機関(checkpoint)を設置すること、2.チェック機関が実施する事項、3遺伝資源の原産国又は提供国が発給した許可証が国際的に認められた遵守の証明書となるととが規定されている。

上記、主要条文を基に具体化すると、図1の通りである。つまり、遺伝資源提供国は主権的権利の行使として遺伝資源の取得の機会を提供する仕組みを制定することができる(なお、設けることが義務付けられているわけではないことに留意することが必要)。制定する際、制度の透明性、明確性、法的確実性を与えることや許可書の発給などが求められる。一方、遺伝資源の利用国は、国境を越えて取得された遺伝資源が提供国の国内法令に従って取得されたことを確保することが義務付けられている。それらは、チェック機関による関連する情報の収集や受理などによって行われる。

2.名古屋議定書の国内実施に向けた課題と考察
一般に国際条約の国内実施は、「4段階モデル」で整理される。つまり、第1に「条約の定立」、第2に「成立した条約の国内法への編入」、第3に「整備された、国内法令の執行」、最後に、「条約に基づく国内法への編入及び執行の検証」である。我が国の名古屋議定書に対する現段階は「国内法への編入」の段階にある。では、国内法への編入にあたって、どのような課題があるのか、特に、利用国措置に焦点をあて整理し、若干の考察を試みる。なお、以下は原稿のスペースの関係上、本来多岐に渡る論点の中で中心的なポイントのみとしていることにご留意して頂きたい。

<論点1 提供国法令の遵守>
議定書第15条1項は、利用される遺伝資源が合法的に取得されていることを締約国に義務付けている。遺伝資源を提供する国の法令は一律ではないため、それらに対応した枠組みを検討する必要があるが、遺伝資源の利用者に対して、どの程度まで遵守の証明を要求するのか?

<論点2 遺伝費源の利用の監視>
第17条1項は、各締約国に対して遵守を支援するために、チェック機関を1つ以上設置し、遺伝資源の利用者に対して、PICに関連した情報や遺伝資源の出所等をチェック機関に提供することを求めている。チェック機関はどういった機関及び様態にすれば、効率的で効果的になるか?

<論点3 不遵守に関する措置について>
議定書は第15条2項、第16条2項、第17条1項(a)(iii) の3つの条文で、不遵守(non-compliance)に関する措置を講じることを求めている。第15条、第16条では、利用される遺伝資源などが合法的に取得されたことを確保するために締約国が講じた措置を遵守していない場合に、その不遵守の状況に対応するための措置を講じることを締約国に求めている。
第17条では、遺伝資源の利用者に利用に関する情報を要求したものの、情報を提供しない、情報を提供したものの、間違いがあったといった不遵守の状況に対処するための措置を講じることを求めている。これらの状況に係る不遵守の措置として、どのような措置が適当か?

1点目の論点については、提供国が合法的に取得したことを証明するための許可書を発給することとなっているため、許可書を所持することが少なくとも必要になると考えられる。

2点目の論点については、遺伝資源の利用者は多岐に渡り、その利用も種苗や医薬品企業では異なる。そういった遺伝資源の利用に応じた制度設計が必要であると考えられる。

3点目の論点については、各国によって対応が異なってきていることから(EUは罰則を設け、韓国では国会に提出されたABS法案を確認すると、罰則を設けず勧告に留まっている)、その対応は慎重に検討することが必要であると考えられる。しかし、真面自に対応している方とそうでない方との間に不釣り合いが生じさせないようにすること、また、不遵守(non-compliance)となっていることから、いきなり罰則等を適用させるといった厳しい措置にするのではなく、指導、勧告、命令といった段階を踏ませ、遵守へと回復させていくことが重要ではないかと考えられる。

これらの論点は現在、環境省を中心として、政府内部で検討が行われており、生物多様性国家戦略2012 -2020にある2015年までの名古屋議定書の締結及び国内措置の実施を目指している。

参考文献

  • 磯崎博司「ABS問題の背景」
  • 磯崎博司・炭田精造・渡辺順子・田上麻衣子・安藤勝彦(編)
  • 『生物遺伝資源へのアクセスと利益配分-生物多様性条約の課題-』(信山社、2011年)51-57頁。
  • 名古屋議定書に係る国内措置のあり方検討会配布資料及び議事録http://www.env.go.jp/natu re/b i odic/a bs/-conf01.htm
    Ryo Kohsa,“The Negotiating History of the Nagoya Protocol on ABS: Perspective from Japan,”
  • 日本知財学会誌,Vol. 9, No. 1 (2012), pp. 56-66.
  • 北村喜宣「環境条約の国内実施一特にあたって」
  • 『ジュリスト増刊 論究ジュリスト』No.7(有斐閣、2013年)

名古屋議定書に基づく国内措置の課題及び検討は以下、様々な論者によって行われているため、併せて確認して頂きたい。

  • 杉中敦「名古屋議定書の国内法制度に関する主要論点についての考察」「環境経済・政策研究」Vol. 7, No.1 (2014年)
  • 北村喜宣「名古屋議定書の国内実施のあり方」『上智法学論集』58巻1号(2014年)

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